WebARや3D商品展示に欠かせない「3Dモデル」。GLB・USDZ形式のファイルを用意する方法は複数ありますが、費用・難易度・仕上がりの精度はそれぞれ大きく異なります。本記事では5つの制作方法を比較し、自社の目的・予算・リソースに合った方法の選び方を解説します。
5つの方法 比較表
| 方法 | 費用目安 | 難易度 | 精度 | 向いているもの | 制作期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① Blenderで手作り | 無料(時間コスト) | 高 | 高(デザイン次第) | シンプルな形状・オリジナルデザイン | 数日〜数週間 |
| ② 3Dスキャンアプリ | 無料〜月額数千円 | 低〜中 | 中〜高 | 実在する物体・商品 | 数時間〜1日 |
| ③ フォトグラメトリー | 無料〜数万円 | 中 | 高 | 複雑な形状・文化財・建築 | 1〜3日 |
| ④ 既存素材の活用 | 無料〜数万円 | 低 | 中(素材依存) | 汎用品・インテリア・車など | 数時間 |
| ⑤ 外注(制作会社) | 3〜30万円/モデル | 低(依頼するだけ) | 非常に高 | 高精度が必要な商品・キャラクター | 1〜4週間 |
① Blenderで3Dモデルを手作りする
基本ワークフロー
Blenderは無料のオープンソース3DCGソフトウェアで、プロの映像制作・ゲーム開発でも広く使われています。WebAR用のGLB形式への書き出しにも標準対応しています。
- Step1 モデリング:基本形状(立方体・球・円柱)から削り出し・押し出し・ループカットなどの操作でモデルを造形する
- Step2 UV展開:3Dモデルの表面を2Dの展開図として展開し、テクスチャを貼り付ける準備をする
- Step3 マテリアル・テクスチャ設定:PBR(物理ベースレンダリング)マテリアルで色・反射・粗さなどを設定する
- Step4 ポリゴン最適化:Decimate修飾子などでポリゴン数を削減し、WebARで動作する軽量なモデルにする(目安:10万ポリゴン以下)
- Step5 GLBエクスポート:File → Export → glTF 2.0 を選択し、GLB形式で書き出す。USDZはRealityConverterなどで変換する
学習コストは高いですが、Blenderを習得すれば商業クオリティのモデルを内製できます。YouTube・Udemy等の学習リソースが充実しているため、独学も可能です。
② 3Dスキャンアプリで手軽に制作
主要3Dスキャンアプリ比較
| アプリ | 対応OS | 料金 | 精度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Polycam | iOS・Android | 無料〜月額$14.99 | 高 | LiDARセンサー対応。室内スキャンも可能 |
| RealityScan | iOS | 無料 | 高 | Epic Games製。フォトグラメトリー方式。UE連携強み |
| Scaniverse | iOS | 無料 | 中〜高 | LiDAR+フォトグラメトリーのハイブリッド。軽量モデル出力に優秀 |
| KIRI Engine | iOS・Android | 無料〜月額$9.99 | 中 | Android対応。クラウド処理で高精度モデルを生成 |
iPhone Pro以降のLiDARスキャナー搭載モデルを使えば、特にPolycam・Scaniverceで高精度な3Dモデルを短時間で生成できます。商品撮影のように対象物を30〜60枚程度の写真で撮影するだけでAR用モデルが完成します。
③ フォトグラメトリーで高精度モデルを作る
フォトグラメトリーは、複数の写真から3Dモデルを自動生成する技術です。3Dスキャンアプリもフォトグラメトリーを使いますが、専用ソフトウェアを使えばより高精度なモデルが生成できます。
- Meshroom(無料):GPU加速対応のオープンソースフォトグラメトリーソフト。高精度だが処理時間が長い
- RealityCapture(従量課金):業界標準の高速・高精度フォトグラメトリーソフト。文化財デジタル化・ゲーム開発に広く使用
- Metashape(Agisoft)(有料:約18万円):測量・建築分野で定番のフォトグラメトリーソフト
撮影時は150〜300枚の写真を撮影し、均一な照明環境(曇りの日の屋外や、ディフューズライトを使った屋内)で行うと精度が上がります。
④ 既存3D素材を活用する
すべてのモデルをゼロから作る必要はありません。既存の3D素材サイトを活用することで、制作コスト・時間を大幅に削減できます。
- Sketchfab:数百万点以上の3Dモデルを配布。glTF/GLB形式での直接ダウンロード可能。無料〜有料モデルあり
- TurboSquid:高品質な商用3Dモデルマーケット。1モデル数百〜数万円
- Poly Pizza:ローポリゴンの無料モデルを多数配布。WebAR用途に最適
- Google Poly(アーカイブ):サービス終了したが、アーカイブから入手可能なモデルあり
ライセンスに注意が必要です。商用利用・改変可否・クレジット表記の要否を必ず確認してから利用してください。
⑤ 外注で高品質モデルを制作する
外注時の相場
| 商品の複雑さ | 相場(1モデル) | 期間目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| シンプル(箱型・ボトルなど) | 3〜8万円 | 3〜7日 | EC商品の低コスト展開 |
| 中程度(家具・家電・服飾) | 8〜20万円 | 1〜2週間 | ARショールーム・試着 |
| 複雑(機械・キャラクター・建築) | 20〜50万円〜 | 2〜4週間 | 展示会デモ・高精度商品展示 |
外注先の選び方のポイントとして、WebAR向けのGLB出力実績・ポリゴン最適化への理解・過去の納品サンプルの確認が重要です。3DCG制作に強い会社でも、WebAR用の軽量化に不慣れな場合があるため、事前に「WebブラウザでのAR表示を前提とした軽量モデル」と明示して依頼することが必要です。
GLBとUSDZの違いと使い分け
- GLB(glTF Binary):Khronos Group策定の標準フォーマット。Android・Webブラウザ・Windows対応。WebARではGLBが標準
- USDZ:Apple策定のフォーマット。iOS・macOS・Safariのネイティブ「ARクイックルック」で使用。iOS向けARにはUSDZが必要
- 両対応の方法:BlenderでGLBを出力後、AppleのRealityConverter(無料、Mac専用)でUSDZに変換するのが一般的なワークフロー
よくある質問
スマートフォンでの快適なAR表示には、GLBファイルで5MB以下が推奨されます。テクスチャの圧縮(KTX2形式)・ポリゴン数の削減・メッシュの統合などの最適化で大幅なサイズ削減が可能です。
GLBとUSDZの両方を用意することで、iOS・Androidに対応できます。GLBをBlenderで作成し、RealityConverter(Mac用)でUSDZに変換するのが標準的なワークフローです。WebARライブラリ(model-viewer等)はGLBで両プラットフォームに対応しています。
簡単なシンプル形状のモデルであれば、基礎を学んで1〜2週間で制作できるようになります。ただし、商業レベルの有機的な形状・テクスチャリング・最適化まで習得するには数ヶ月の継続学習が必要です。まずはYouTubeの「Blender Guru」等の入門チュートリアルから始めることをおすすめします。