iPhoneやiPadのカメラアプリで3DオブジェクトをAR表示できる「AR Quick Look」——その中心にあるファイル形式がUSDZです。AppleとPixarが共同開発したUSDZ(Universal Scene Description Zip)は、iOS 12以降でサポートされており、2026年現在も消費者向けWebARの主要フォーマットとして活躍しています。本記事ではUSDZの基礎から変換・作成方法、Webへの埋め込みまで実践的に解説します。
USDZとUSDの違い
USDZを理解するには、まずUSD(Universal Scene Description)との関係を把握する必要があります。
- USD(.usd/.usda/.usdc): Pixarが開発したオープンな3Dシーン記述フォーマット。大規模VFXプロジェクトでの複数ファイルの参照・構成管理に使われる。
- USDZ(.usdz): USDのアセット(テクスチャ・メッシュ・アニメーション等)をひとつのZIPアーカイブにパッケージしたもの。Apple・Adobeが共同開発し、モバイルARでの配信に最適化されている。
一言で言えば、USDZは「配信用に最適化したUSDのパッケージ版」です。
USDZとGLBの比較
| 項目 | USDZ | GLB(glTF Binary) |
|---|---|---|
| 推進主体 | Apple・Pixar・Adobe | Khronos Group |
| 主な用途 | iOS AR Quick Look、Apple Vision Pro | Web 3D、Android WebAR、Three.js |
| iOS対応 | ネイティブサポート(iOS 12〜) | Quick Look非対応(変換必要) |
| Android対応 | Google Sceneviewerで対応(一部) | Android ARCore WebAR、Sceneviewerネイティブ対応 |
| アニメーション | USD Physics・スケルタルアニメ対応 | スキニング・モーフターゲット対応 |
| ファイルサイズ | テクスチャにJPEG/PNG使用可(比較的大きい) | KTX2圧縮テクスチャ対応(小さく最適化可能) |
| 物理シミュレーション | USD Physics対応 | 非対応(拡張なし) |
iOS AR Quick LookでのAR表示の仕組み
iPhoneのSafariでUSDZファイルリンクをタップすると、OSがネイティブのAR Quick Lookビューアを起動します。このビューアはARKitを使って床面・壁面を検出し、3Dオブジェクトを部屋に配置します。ユーザーはピンチ操作でサイズ調整、ドラッグで位置移動が可能です。
AR Quick LookはSafariのWebKit統合により、HTMLページからパラメータを渡すことも可能です。allowsContentScaling=0でサイズ固定、canonicalWebPageURLでシェア時のURL設定などが行えます。
BlenderからUSDZをエクスポートする手順
Blender 3.5以降ではUSDZ形式への直接エクスポートに対応しています。
- Step 1: Blenderで3Dモデルを完成させる(マテリアルはPrincipled BSDFを推奨)
- Step 2: File → Export → USD(.usd, .usdc, .usdz)を選択
- Step 3: エクスポートオプションで「Export as USDZ Archive(.usdz)」にチェック
- Step 4: テクスチャの解像度・圧縮設定を確認し、「Export USD」ボタンをクリック
- Step 5: iPhoneのSafariからファイルにアクセスしてAR表示を確認
注意点: Blenderの発光マテリアル(Emission)やマルチUVはUSDZでサポートされない場合があります。複雑なシェーダーはBake処理でテクスチャに焼き込んでからエクスポートすることを推奨します。
macOS / Reality Composerでの編集
Apple純正の「Reality Composer」(macOS・iOS)を使うと、ノーコードでUSDZにインタラクションやアニメーションを追加できます。