AR制作を外注する場合、「何を決めれば良いか」「どのくらい時間がかかるか」が分からず不安になる方も多いです。AR制作は要件定義から納品まで複数のフェーズがあり、各フェーズで必要な情報や意思決定が異なります。本記事では、AR制作の全工程を5フェーズに分けて、期間目安・クライアント側の準備物・よくある手戻りのパターンまで解説します。
AR制作の5フェーズ概要
| フェーズ | 内容 | 期間目安 | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| Phase 1:要件定義 | 目的・ターゲット・機能要件の確定 | 1〜2週間 | クライアント+ディレクター |
| Phase 2:企画・設計 | 体験設計・技術選定・コンテ制作 | 1〜2週間 | ディレクター+デザイナー |
| Phase 3:3Dモデル制作 | 商品・キャラクターの3Dモデリング・テクスチャ | 2〜4週間 | 3Dアーティスト |
| Phase 4:AR実装 | WebARまたはアプリへのAR機能実装 | 2〜3週間 | ARエンジニア |
| Phase 5:テスト・納品 | 動作確認・修正・最終納品 | 1〜2週間 | 全メンバー |
全工程の合計期間は、スムーズに進んだ場合で7〜13週間(約2〜3ヶ月)が目安です。追加修正や素材の差し戻しが発生すると、さらに2〜4週間延びることがあります。
Phase 1:要件定義(1〜2週間)
この段階で決めること
- ARコンテンツの目的(認知・購買促進・教育・エンターテインメントなど)
- ターゲットユーザーと利用シーン(ECサイト・店頭・イベント・SNSなど)
- WebAR vs アプリARの選択
- 対応デバイス・OSのバージョン要件
- 予算と納期
クライアント側が準備するもの
- 商品・素材の参考画像・カタログ
- ブランドガイドライン(カラー・フォント・ロゴ)
- 競合・参考にしたいAR事例のURL
- 予算規模の概算
Phase 2:企画・設計(1〜2週間)
この段階で決めること
- AR体験のシナリオ・インタラクションの設計
- 使用するARプラットフォームまたはSDKの選定
- 3Dモデルのレベルオブディテール(LOD)の方針
- コンテ(絵コンテ・テキストコンテ)の承認
この段階でのコンテ承認が最も重要です。コンテが確定してから3Dモデル制作に進むため、後からの大幅な変更は追加費用・期間延長の主な原因になります。
Phase 3:3Dモデル制作(2〜4週間)
3Dモデル制作の流れ
商品・キャラクター・背景などの3Dモデリングを行うフェーズです。一般的には以下の順序で進みます。
- ラフモデル作成(形状の確認)→クライアント確認・修正
- テクスチャ(色・材質)の適用→クライアント確認・修正
- アニメーション設定(動きがある場合)→クライアント確認・修正
- WebAR向けの軽量化(ポリゴン削減・Draco圧縮)
クライアント側が準備するもの
- 商品の実物写真(全方位から撮影したもの、最低8方向)
- 商品の寸法・素材情報
- 既存の3DデータまたはCADデータがある場合は提供
- カラー・仕上げの仕様書(メタリック・マット・グロスなど)
Phase 4:AR実装(2〜3週間)
AR実装フェーズの内容
ARエンジニアが作成した3DモデルをWebARプラットフォームまたはARフレームワーク(AR.js・8th Wall・ARKit/ARCoreなど)に組み込む工程です。マーカーの設定・平面検出の調整・UIの実装・QRコードの生成などを行います。
中間テストの重要性
実装の途中段階で、クライアントに実機でのテスト確認を依頼することが重要です。PCでのデモと実機スマートフォンでは体験が大きく異なるため、必ずiPhone・Androidの実機で確認してください。
Phase 5:テスト・納品(1〜2週間)
テスト項目
- iOS(Safari)・Android(Chrome)での動作確認
- 通信速度の異なる環境(4G・Wi-Fi)での読み込みテスト
- 複数の機種・OSバージョンでの互換性テスト
- QRコードの読み取りテスト(印刷物含む)
- 長時間使用時の動作安定性確認
よくある手戻りのパターンと対策
| 手戻りのパターン | 発生フェーズ | 対策 |
|---|---|---|
| 「思っていたイメージと違う」 | 3Dモデル確認時 | 参考画像を事前に多数共有する。コンテを詳細に作成する |
| 「色・質感が実物と違う」 | テクスチャ確認時 | 商品実物を制作会社に送付する。写真は自然光下で多方向から撮影する |
| 「機能を追加したい」 | AR実装中 | 要件定義の段階で機能リストを確定する。追加は別途見積もりと期間延長が必要 |
| 「iPhoneで動かない」 | テスト時 | iOSでの動作確認を早い段階から実施する。Safari対応の実装方針を事前に確認する |
| 「納期直前に内容変更」 | テスト〜納品時 | 各フェーズでの承認を文書で記録する。変更管理フローを設ける |
発注前のクライアントチェックリスト
- ARで何を達成したいかの目的が明確になっているか
- 参考にしたいAR事例のURLを3つ以上用意できるか
- 商品写真・素材情報・ブランドガイドラインが揃っているか
- 意思決定できるプロジェクトオーナーがいるか
- テスト確認のために実機(iPhone・Android)が用意できるか
よくある質問
一般的なWebAR制作(3Dモデル1点・シンプルなインタラクション)の場合、要件定義から納品まで2〜3ヶ月が目安です。3Dモデルが複数点・複雑なインタラクション・多言語対応などが必要な場合は3〜5ヶ月かかることがあります。スケジュールはプロジェクト開始時に詳細を確認することをおすすめします。
WebARの場合、ノーコードプラットフォーム活用で30万〜80万円、カスタム開発で100万〜300万円が目安です。3Dモデルの数・クオリティ・インタラクションの複雑さによって大きく変わります。まずは要件をご相談いただければ概算見積もりをご提示できます。
最低限必要なのは「商品の全方位写真(8方向以上)」「ブランドカラー・ロゴのデータ」「参考にしたいAR事例のURL」の3点です。既存の3DデータやCADデータがあれば、3Dモデル制作の工数と費用を大幅に削減できます。